宇宙はなぜこのような宇宙なのか

(著者)青木 薫 あおき かおる
(出版社)講談社 現代新書

副題は“人間原理と宇宙論”となっています。宇宙はなぜ,今のような宇宙であり,人間が存在しているのだろうか。こんなことを考えたことのある人は,きっとたくさんいると思います。私が大学生をしていた頃は,人間原理という言葉が出始めた頃でした。なるほどそんな考え方があるのかー!と思った覚えがあります。要は,人間が現に存在しているのだから,宇宙は人間が存在できるようにいろいろな値が決まっているんだということです。うーーん,わかったようなわからないような。

数式も出てこない本ですので,そういう意味では,読み進めやすい本です。しかし,正直なところを言うと,背景になる知識がそれなりにないと理解は深まらないのではないかと思います。科学の塊のような宇宙論で,このような議論がなされていて,真剣に取り上げられているのはぜひ知っておいてほしいですね。この本をきっかけに,人間原理について書いてある本をいくつか読んでみるとよいと思います。

また,多重世界についても書いてあります。中学生のころ,量子力学の入門書を読んでいて,この世の中はいろいろな状態が重なり合っていて,私は,その一つの世界に生きているだけではないのか,他の世界に分裂して生きている私がいるのではないか,私のいない世界もあるのではないか,分裂したそれらの世界は,交わらないので,お互いに知ることはできないのだ,と思っていましたが,全くの夢物語ではなかったようです。