ALMA電波望遠鏡

(著者)石黒 正人 いしぐろ まさと
(出版社)筑摩書房 ちくまプリマ-新書

皆さんはアタカマという地名をご存知ですか? 南米のチリ北部にある標高5000mの大変広い高地です。そこに建設された「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」,略してALMAにまつわる物語です。

日本が世界に誇る望遠鏡といえば,ハワイにある「すばる」望遠鏡が有名ですが,「すばる」は可視光線付近の光で観測します。それに対して,ALMA はそれよりもずっと波長の長いミリ波,サブミリ波の領域の電波を用いて観測します。直径12mと7mのパラボラアンテナを66台並べ,連動させて観測する 巨大な電波望遠鏡なのです。もちろん大がかりな国際的プロジェクトです。

目で見るのと,電波で見る宇宙はどのように違うのでしょうか。X線で見る宇宙も,ガンマ線で見る宇宙もあり,それぞれに宇宙の特徴を明らかにしてく れます。どちらかというと,電波望遠鏡を作り上げていく歴史に立ち会った著者の,生の経験が行間からにじみ出てくる本で,ものづくり系のことが好きな人に は文句なくおすすめの1冊です。きれいな写真も多く載っていて,新書ですのですぐに読めてしまいます。苦労は並大抵ではないけれども,こんな仕事に携わる ことができたらおもしろいだろうなあというのが読後感です。

興味のある人は是非手にとって読んでみてください。