知られざる天才 ニコラ・テスラ エジソンが恐れた発明家

(著者)新戸 雅章 しんど まさあき
(出版社)平凡社 平凡社新書

皆さんはニコラ・テスラを知っていますか。19世紀後半から20世紀前半を生きた工学者であり,技術者です。

エジソンは誰でも知っていますよね。電球を発明した人ですね。ほかにも蓄音機や電話機なども発明しています。エジソンは電気を供給する電力会社も作りましたが,送電は直流で行っていました。今は,交流ですね。交流送電を推し進めたのが,このニコラ・テスラなのです。ニコラ・テスラは,このほかにも,無線通信や無線送電,無線操縦,交流モーターなどの研究も行っています。ちょっと先を行きすぎていたのかもしれません。その業績はエジソンをしのぐほどで,まさに天才発明家なのです。

日本では,エジソンの影に隠れて知名度はほとんどないのでが(高3で磁束密度の単位として習うぐらいです),実は現代の世界に大きな貢献をしているのです。このニコラ・テスラに魅せられて,その姿を世に広めようとがんばっているので著者の新戸さんです。

肩ひじ張らずに,気楽に読み進めることができます。そして,現在の電気の時代がどのように拓かれてきたのかが分かります。本書は,気楽にすぐに読めます。

宇宙ヨットで太陽系を旅しよう 世界初! イカロスの挑戦

(著者)森 治 もり おさむ
(出版社)岩波書店 岩波ジュニア新書

皆さんは,ギリシャ神話に出てくるイカロスを知っていますか?イカロスは,蝋(ろう)で固めた翼によって自由自在に飛ぶ能力を得たのですが,太陽に向かってどんどん飛んだために翼が溶けて、墜落して死んでしまいました。無謀というのは簡単ですが,その勇気や好奇心は見習いたいものです。そういえば,鉄腕アトムの最後も人類のため太陽に向かっていったように思います。

「イカロス」は,宇宙で14m四方の帆(セイル)を広げます。この帆が受ける風は,太陽からの光です。帆で光を反射するときに,ほんとうにわずかですが力を受けることが分かっています。宇宙には空気がありませんから,わずかな力でも十分に利用できるのです。海のヨットと同じで,光の風を受けて,「イカロス」は宇宙空間を自由に航行できるのです。

著者は,JAXAで「イカロス」のプロジェクトリーダーを務めている研究者です。ですから,すみからすみまでよく知っていて,この本では,それを実にわかりやすく,興味深く伝えるのに成功しています。また,著者自身が,どのように宇宙に興味を持ち,研究者への道をたどったのか,そのことも詳しく触れられています。特に第4章と第5章はお勧めです。宇宙に興味がない人,イカロスってなに?という人にも是非読んでほしいと思います。皆さんが自分の人生をどう考えて過ごしていくのか,夢とはどういうものなのか,この著者の考えが気負わずに述べられています。決して順風満帆という訳ではなかったようですが,そのときそのときにベストを尽くしてきた結果,今がある。たとえ宇宙への夢が叶えられなくても、納得した人生を歩めていただろうと著者はいいます。

この本で,もう一つ知ってほしいことは,大学生や大学院生が活躍していることです。若い人たちが最先端のプロジェクトに参画しているのです。皆さんも,数年後には,そうなっているかもしれませんね。

宇宙ヨットのことを学べて,研究者としてのありようも感じ取ることができる,そんなすばらしい本に君たちは出会うことができます。ぜひ,この本に出会ってください。この本は,皆さんと出会えることを待っていることでしょう。

スーパー望遠鏡「アルマ」が見た宇宙

(著者)福井 康雄 ふくい やすお
(出版社)日本評論社

南米のチリ北部にある標高5000mの大変広い高地アタカマ。そこに建設された「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」,略してALMA(アルマ)に関する本が新しく出ました。

序章は,アルマ望遠鏡の仕組みが記述されています。数多くの電波望遠鏡を組み合わせ,データをコンピュータ上で結合して観測するというものですからその理屈を理解するのも少々大変です。また,電波は光にくらべて波長が長いですから,光で観測するのとはまた違った宇宙像が得られます。

第1章からは,アルマの観測データを用いつつ,この宇宙のようすを丁寧に紹介しています。それでも,すこしレベルが高い本のように思います。このような本で最新の情報に触れながら,読みやすい入門書もあわせ読んで,知識を深めていくのが大切だと思います。天文学や宇宙に関する入門書はたくさんありますから,ぜひ,この本にチャレンジしてみませんか。うまく皆さんの興味とマッチすれば,どんどんいろいろな本を読んでいけばよいのです。そんなきっかけになりそうな本だと思います。