地底から宇宙をさぐる

(著者)戸塚 洋二 とつか ようじ / 梶田 隆章 かじた たかあき
(出版社)岩波書店

いまや神岡はニュートリノ物理学の一大拠点といえるほどになっています。その神岡を舞台に,2015年度のノーベル賞を受賞したのが著者のひとり梶田隆章さんです。

中心となったのは,神岡に建設された「カミオカンデ」とよばれる実験施設でした(現在は後継のスーパーカミオカンデが活躍しています)。

この本の主要部分は,戸塚洋二さんが書かれたものです。戸塚洋二さんは,カミオカンデの中心人物で,惜しくも2008年に亡くなられたのですが,ご存命であれば,ノーベル賞を間違いなく受賞されたに違いありません。

わずか100ページあまりの薄い本ですが,素粒子物理学の歴史がとてもわかりやすく,多くのエピソードを交えながら書かれています。気負うことなく読み進めることができます。そして,戸塚さんが進めた「カミオカンデ」の立ち上げの様子も詳しく述べられています。研究するということ,何かを作り上げるということ,それがどういうことなのかあるがままに述べられています。私は,その行間から大変な責任感と苦労を感じるとともに,ポジティブであることの大切さを強く感じました。

皆さんにも手にとって読んでもらいたいと思います。中学生にも読めると思います。