暗黒物質とは何か 宇宙創成の謎に挑む

(著者)鈴木 洋一郎 すずき よういちろう
(出版社)幻冬舎 幻冬舎新書

ノーベル物理学賞でニュートリノ振動が一躍脚光を浴びています。著者はスーパーカミオカンデの立ち上げとその後の実験に中心的に関わってこられた方です。

本書には,実験屋として活躍してきた経験から,暗黒物質の探索について興味深い話がいっぱい詰まっています。実験をするとはどういうことなのか,少しは分かったような気がします。

さて,暗黒物質とはなんでしょうか。実は宇宙の質量の7,8割を占めている(物理学者はあるという証拠をつかんでいるようです),未だ観測にかかっ てこない,正体不明の物質なのです。この暗黒物質を検出するために,スーパーカミオカンデと同じく神岡鉱山の地下に作られた巨大な実験装置が 「XMASS(エックスマス)」なのです。著者はその実験の代表者です。巨額の予算を使っての建設ですが,その苦労もさりげなく書かれています。

また,神岡はいまや素粒子物理学実験の世界の中心地と言っても過言ではないと思います。そこでは,重力波検出を目指すKAGRA(カグラ)も建設中 です。東北大学のカムランドも成果を上げています。今現在のようすが伝わってくるこの本を,是非手にとって読んでみてください。

ゾウの時間ネズミの時間

(著者)本川 達雄 もとかわ たつお
(出版社)中央公論新社 中公新書

動物の体のサイズには違いがあります。大きな動物,小さな動物,寿命もいろいろ,動きもいろいろです。一見,ばらばらなようですが,そこに物理学の目が入ると景色が全く違って見えてきます。

著者は生物学者ですが,発想が尋常ではないように思います。この本で使われている物理学の内容は高校で習うことではないものが多いのですが,難しく はありません。よく読めば理解が可能でしょう。このようなところで物理学的な考え方が応用できるのか,と思わずうなってしまいます。

このような本に出会えるのは,図書館の威力ですね。インターネットなどでは,ある程度目的がはっきりしているものは調べられますが,思いがけない出 会いは少ないように思います。図書館や本屋さんで時間を気にせずにあちこちの本棚の本を手に取ってみるのはとても大切なことだと思います。

皆さんもまずはこの本を手に取ってみませんか。