科学者はなぜウソをつくのか 捏造と撤回の科学史

(著者)小谷 太郎 こたに たろう
(出版社)dZERO

近年STAP細胞で日本の科学界が揺れに揺れたことは記憶に新しいことです。多くの優秀な科学者がそろっていながらなぜこんなことが起こるのでしょうか。

実は,こういったことはこれまでにも何回となく繰り返されてきたのです。かなりの長期間にわたって発覚しなかった例もあります。日本の考古学界で も,神の手とよばれた発掘の名人がいかさまを行っていたことが2000年に明らかになりました。ほぼ4半世紀にわたって,不正を行っていたようです。 世界でも,同じような例が数多く見られます。

この本では,8つの事例を取り上げて,その経過をわかりやすく記述しています。その結果,共通点が見られます。本人以外再現できないこと,周囲の人 が確認を怠っていることなどです。怪しいと思いながらも,盛り上がってしまって言い出せないのですね。 決して人ごとではありません。実験のデータをいい加減に扱ったり,友達のレポートを適当に書き写したりしている人は,立派な予備軍かもしれません。いずれ ばれるのがわかっているのになぜ?きっと,始まりは些細なことだったのだろうとiketは思います。引き返せなくなってしまうほど大きな反響を呼んでし まったのでしょうね。

皆さんも是非考えてみて欲しいなと思います。

巨大科学

2015年8月に,信州は飛騨・高山のスーパーカミオカンデやカムランド・飛騨天文台を生徒と一緒に見てきました。スーパーカミオカンデとカムランド は地下1000mに建設された施設です。神岡鉱山の坑道を利用して建設したものです。今はさらに,暗黒物質を検出するXMASSや重力波を検出する KAGRAという装置を建設しています。

素粒子と加速器に夢を抱いて大学に進みましたが,とっても小さな素粒子を調べるのに超巨大な加速器が必要になるというのは大いなる逆説ですね。いまや,一国ではまかないきれず,いくつかの国が共同して加速器を建設する時代になっています。

こういった巨大な施設も第一線の研究者が,設計し,予算を獲得し,何千人にも及ぶ研究者や技術者などなどをまとめていかなければいけないんですね。 すごいことだなーとびっくりします。構想からデータがとれて論文になるまでに何年かかるのでしょうか。無事によい結果は出るのでしょうか。

日本の素粒子研究は世界の最先端を行っていますが,裏に回ると大変な世界だということを実感して帰ってきました。

もっといろいろなところにもいってみたいものです。JAXA,KEK,・・・,いっぱいありますね。

京大理系教授の伝える技術

(著者)鎌田 浩毅 かまた ひろき
(出版社)PHP研究所 PHP新書

プレゼンテーションの時代で,多くの人がプレゼンソフトを駆使して上手にプレゼンをする時代になってきました。それでも,伝えるというのはなかなか 大変なことです。見かけはよくなっても,伝えようとする内容が本当に相手に伝わっているかどうか,常に自問自答しなければなりません。

著者は火山学者で,iketも高校生向けの講義を聴いたこともありますが,とてもわかりやすく話をされます。また,一般向けに書かれている火山の本もわかりやすい本です。

そんな著者ですが,テレビに出ても,学生を相手にしてもうまく伝わらないとずっと悩んでいたといいます。ここからが理系人間の真骨頂。「伝える技術」の達人たちの共通点を科学的に分析したそうです。たどり着いた結論は,「価値観の橋渡し」だそうです。

「価値観の橋渡し」ってどういうことなんでしょう。具体的な内容は,どうぞ本書を読んでください。すぐに読む切れること間違いなしです。

うまく伝えることができない・・・。なんだかぎくしゃくする・・・。そんな風に人間関係に悩んでいる人にも一読の価値のある本です。是非手にとって見てください。

ヒッグス粒子と宇宙創成

(著者)竹内 薫 たけうち かおる
(出版社)日本経済新聞出版社 日経プレミアシリーズ

2012年7月にCERN(欧州原子核研究機構)のLHCという加速器で発見されたヒッグス粒子は,素粒子に関する標準理論が予言した最後の素粒子です。2013年には,ヒッグス粒子の存在を予言したアングレール氏とヒッグス氏にノーベル賞が授与されました。

本書はサイエンスライターである著者自身がこの分野で博士号を取得していることもあり,大変わかりやすいものになっています。素粒子に関して,標準理論に関して,宇宙の始まりについて,加速器に関して,と話は広がりますが,決して無理に展開はしていません。

一般の科学愛好者だけでなく,中高校生にとっても格好の入門書になっていると思います。最先端の素粒子物理にふれることができるこの一冊,是非手にとって読んでみてください。