ヒッグス粒子と宇宙創成

(著者)竹内 薫 たけうち かおる
(出版社)日本経済新聞出版社 日経プレミアシリーズ

2012年7月にCERN(欧州原子核研究機構)のLHCという加速器で発見されたヒッグス粒子は,素粒子に関する標準理論が予言した最後の素粒子です。2013年には,ヒッグス粒子の存在を予言したアングレール氏とヒッグス氏にノーベル賞が授与されました。

本書はサイエンスライターである著者自身がこの分野で博士号を取得していることもあり,大変わかりやすいものになっています。素粒子に関して,標準理論に関して,宇宙の始まりについて,加速器に関して,と話は広がりますが,決して無理に展開はしていません。

一般の科学愛好者だけでなく,中高校生にとっても格好の入門書になっていると思います。最先端の素粒子物理にふれることができるこの一冊,是非手にとって読んでみてください。

これだけ!高校物理 力学編

(著者)桑子 研 くわこ けん
(出版社)秀和システム

前回に引き続き,ふだんの学習の手助けになる本を紹介しましょう。

授業で全部分かれば理想だけれども,ほとんど分からないのが現実だと思います。いかがですか?
そんなとき,教科書をまずよく読んでとよく言うんだけれど,教科書もなかなか手強い!じゃあどうすればいいんだ? 友達に聞こう,先生に質問しよう・・・。でも,家で勉強しているとなかなかすぐに質問もできないし・・・。

手頃な参考書があると,勉強がはかどりますね。大きな本屋さんに行くと,それなりにたくさんの参考書に出会えます。何が手頃かは皆さん一人一人で 違っていると思いますよ。重厚な解説と豊富な練習問題が載っているような参考書があう人もいるだろうし,フレンドリーで,かるい感じでどんどん読み進める ことができる参考書がいいと言う人もいるでしょうね。

この本は,後者です。300ページ近くありますが,図は大きいし,字もそこそこ大きいし,行間は広いし,練習問題もないし,どんどん読み進めること ができます。3年生の皆さんは,ちょうど力学が一通り終わったので,今読めばどんぴしゃり,復習ができて基礎はばっちりです。あとは問題演習をすれば完成 です。人に教えてもらうのもよいのですが,参考書片手にじっくりと考えてみるというのも大事ですね。

一度,図書館で手に取ってみて欲しいと思います。

大人のやりなおし 中学物理

(著者)左巻 健男 さまき たけお
(出版社)ソフトバンク クリエイティブ サイエンス・アイ新書

高校で学ぶ物理の大半は中学校で習っている。高校では,数学的に扱うことによって,少し話を深めているに過ぎない。なーんてことをいうと,がんばって勉強している皆さんに申し訳ない。

図書館にあったこの本は,3年生が読むとちょうどよい本だと思います。これまで学んできたことを振り返るのにお薦めします。高校で学ぶほぼ全範囲が 入っています。たぶん2,3日もかからずに読めるし,斜め読みでも,飛ばし読みでもかまいません。何となく,学んでいる物理の全体像がつかめます。

是非手にとって読んでみてください。

強い力と弱い力

(著者)大栗 博司 おおぐり ひろし
(出版社)幻冬舎 幻冬舎新書

物理の世界では,電磁気力,強い力,弱い力,そして重力を4つの力とよんでいます。素粒子の世界を説明する最新の理論は「標準模型」とよばれますが,その中には重力は含まれません。本書は標準模型を通じてヒッグス粒子を解説した本です。

この著者も,最前線で研究に携わっているため,非常に生き生きとした描写にあふれた本になっています。ちょっとしたエピソードにもその真の意味と評 価がさりげなく付け加えられています。まるで,現場にいるような臨場感があります。おもしろくて分かりやすくて,しかも,相当深いことを語っています。

このような本を是非手にとって読んでほしいと思います。

宇宙になぜ我々が存在するのか

(著者)村山 斉 むらやま ひとし
(出版社)講談社 ブルーバックス

引き続き村山斉さんの本の紹介です。

この本は,小柴昌俊さんがノーベル賞(2002年)を受賞した「ニュートリノ」を中心に書かれています。

カミオカンデやスーパーカミオカンデ,カムランドなど,巨大な実験装置で何をやろうとしているのかということもよく分かります。先に紹介した「宇宙は何でできているのか」と併せて読んで欲しい本です。手にとってくださいね。

宇宙は何でできているのか

(著者)村山 斉 むらやま ひとし
(出版社)幻冬舎 幻冬舎新書

いま,素粒子物理学は格段の進歩をとげ,あらたなステージにさしかかっているようです。

iketが大学生だった頃,いろいろな素粒子が見つかりつつあり,それらをどのように整理すればよいのか,混乱していた時代でした。南部陽一郎の理 論がでて,クォークが提唱されてまもなくの時代で大学の教授も半信半疑でした。小林・益川の理論が提唱されたのはその頃でした。

それから半世紀近くがたち,理論も進化し,実験・観測も長足の進歩を遂げました。まさに,素粒子新時代の幕開けですね。その新時代を易しく解説する第一人者とiketが思っているのが村山斉さんなのです。

素粒子物理学は宇宙論につながりますが,とっても難しいのでしょう?

いえいえ,そんなことはありません。研究者になるのなら,物理,数学,・・・とそれ相応の力が必要でしょうが,現在のようすを知るのならそれほど大層な知識はいりません。興味と少しだけの根気があれば十分です。

本当によく分かっている人が,本当によく分かってもらいたいと思っている編集者と組んで本気で分かってもらおうとして書いた本は本当によく分かります。この本はまさによく分かる本です。現場の最前線の息吹が伝わってきます。iket絶賛です。

素粒子の基礎から,クォーク,4つの力,ヒグス粒子,ニュートリノ,暗黒物質・・・,よくここまで書いたものだとびっくりします。是非手にとって読んでみてください。

中谷宇吉郎随筆集

(著者)中谷 宇吉郎 なかや うきちろう 樋口敬二 編
(出版社)岩波書店 ワイド版岩波文庫

前に紹介した寺田寅彦の教えを受けた弟子に当たる物理学者で,雪博士として低温物理の開拓者として知られています。中谷宇吉郎は,寺田寅彦に劣らずいろいろな文章を残しています。この本は,その中から四十編を選んでまとめられています。

この中で,さらにお薦めするのが,「雪の十勝」・「雪を作る話」・「雪雑記」・「「霜柱の研究」について」,そして「原子爆弾雑話」・「比較科学 論」・「地球の円い話」です。なかでも,iketの一押しは「地球の円い話」です。有効数字の話が分かりやすく書かれています。 もちろんどの文章も軽いようでいて深みがあったりするので,じっくりと読んでもらえると最高!

是非手にとって読んでみてください。

科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集

(編者)池内 了 いけうち さとる
(出版社)岩波書店 岩波少年文庫

寺田寅彦随筆集を少し前に紹介しましたが,寺田寅彦エッセイ集が図書館にありました。

新しい本なので,ずいぶん読みやすくなっています。

先に紹介した「電車の混雑について」・「科学者とあたま」も収録されていますが,他にも「茶碗の湯」や「金平糖」・「津浪と人間」など皆さんに非読んでもらいたい文章がいっぱ収められています。是非手にとって読んでください。